心と体

2009年1月24日 (土)

江夏投手を叱った男


 前回は、大リーグの選手たちによく見られるツバ吐きの習慣について語った。日本の選手はツバを吐かない、サムライはツバを吐かない、などと大きなことを言ったものだから、さっそく周囲の知人から反対意見をいただいた。まだ、この「孤独なブログ」にコメントが付くところまでは行っていないらしい。

 そこで、こちらから関連ブログがないか調べてみたところ、有る、有る、「ツバを吐く」という行為にこれほど関心が集まっているとは思わなかったほど、沢山のブログを発見した。

 日本のプロ野球にも、マウンド上でツバを吐きまくる投手がいるとか、バッターボックスに入るとやたらにペッペッやり始める打者がいる、などといったことが書いてある。松井秀喜がツバを吐くのを見て驚かされたというような記事もあった。

 ツバ吐き行為にこれほど関心が高いということ自体、日本人一般に見られる清潔感の現れなのではないかと、吾輩はいささか誇らしさを感じていたのだが、その日本人のツバ吐き行為に目くじらを立てている外国人観光客がいるという話も書かれていて、こりゃ一体どうなってるんだと思ったしだいである。

 お隣の国では、人々の所嫌わずツバを吐く習慣を無くそうとして、オリンピック開催の前には、それこそ国をあげて運動を起こしていた。その効果はあったのだろうか。

 こういう雑多なことについては、もう少し先へ行ってから吾輩の考えを述べることにしよう。

 どんな場合でも、人とは反対の行動を取る人がいるし、また反対の現象もあるのだから、部分で全体を判断してはならないと思う。ただ、どこまでが部分でどこまでが全体かということ、どこまでが例外的でどこまでが本質的かということを決めるのは意外と難しい。

 吾輩は、これぞ日本人の本質であり精神だと思ったことから話し始めることにしよう。甲子園球場のグラウンド整備員だった藤本治一郎という人が、江夏投手のツバ吐きを叱ったという話がある(朝日新聞「ニッポン人脈記─甲子園アルバム8」2007年08月14日)。

 戦後、甲子園球場のグラウンドを甦らせるために尽力し、「甲子園の土守」と言われた藤本が、1967年、阪神に入団したばかりの江夏豊を、他の選手たちの前で叱りつけたそうである。

 江夏がグラウンドにツバを吐いたからだが、江夏自身、普通はこんなことはしない。高校や大学野球の修練では、決して許されない行為だからだ。江夏は、土ぼこりを吸い込んだか何かで、やむを得ずペッとやったらしいのだが、とたんに藤本に怒鳴りつけられた。

 「土は生きものや」というのが藤本の口癖だったらしいが、こういう職人気質に対する江夏の反応が面白い。彼は、自分の行為に深く恥じ入り、グラウンドには二度とツバを吐くまいと心に誓ったそうだ。

 衆人の面前で選手を叱りとばすグラウンドキーパー。それに反発するのではなく、自分の非を悟り、これからの生き様を考える選手。そして、こうした両者の在り方に意気を感じずにはいられない周りの人々。こういった現象のすべてがまさに日本的とは言えないだろうか。

 みんなで踊りのポーズを取りながら、土ならしの道具を引きずって歩く、あの大リーグのグラウンドキーパーたちには、またそれなりに底抜けの明るさがあって、何ともアメリカ的と言えるが、そのグラウンドに平気でツバを吐く選手たちのイメージとも重なって、やはり日本とは違うなという思いは避けられない。

 グラウンドキーパーとしての職人芸で名を残した藤本や、その弟子の辻啓之介にとって、土ならしの道具を引きずるということでさえ、もっと真剣で、思索を必要とする行為であった。重さを掛けすぎず、浮かせすぎずに引きずる方法を、彼らは常に考えていた。

 マウンドの土の盛り上げや、芝生の状態にも細かく神経を使い、芝の最適の長さ10ミリを見いだすまでに5年以上もかかったという。イレギュラー・バウンドを起こして、選手に当たりでもしたら自分たちの責任だということをいつも言っていたらしい。

 当然、ツバやタンで土や芝生そのものを汚すことと共に、選手たちの身を汚すことをも怖れたのであろう。単にキタナイというだけでなく、そこには日本伝統のケガレの思想もあったに違いない。

 天にツバすることのみならず、地にツバすることも悪だと考えられたのである。

 70歳でこの世を去った藤本の棺に、弟子の辻啓之介は、土ならしの道具のミニチュアを入れて、師を送ったという。

参照:http://www2.asahi.com/koshien/column/jinmyakuki/TKY200707070227.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年1月12日 (月)

大リーガーはツバを吐く


 吾輩は、「ツバを吐く」という人間の行為を一生かけて研究しようと思い立った「ツバ吐き博士」こと椿八十郎である。

 誰ひとり見向きもしない孤独なブログになってしまうかも知れないが、世の中には、こんな子供じみた試みを応援してくれるイキな人もいるに違いないと思い、とにかく始めてみることにした。

 孤独なブログ・子供じみたブログ「コドログ」を試みる、心のブログ「ココログ」である。

       ☆       ☆       ☆

 大リーグの試合が好きでBS放送をよく見ている。日本のプロ野球と違うところは色々あるが、吾輩が特に気になるのは、大リーグには、やたらとツバを吐く選手や監督やコーチが多いということだ。あなたは気にならないだろうか?

 吾輩は、正直言って、こんなシーンはあまり見たいとは思わない。時々、日本のプロ野球の中継を見るとホッとするのだ。日本の選手たちはなんと行儀が良くて、清潔なんだろう。球場やベンチにツバを吐く選手など一人も見当たらない。

 それに比べて、大リーグの選手たちのだらしないこと。もちろん、全員が全員というわけではないが、口をモグモグ動かしていて、フィールドであろうが、ベンチの床であろうが、所かまわずペッペッとツバを吐き散らす。

 バッターボックスに立った打者が、マウンド上の投手が、守備に付いている野手が、時には大粒の、時には弾丸状の、時には飛沫のようなツバを飛ばしている。

 でも、選手よりももっとひどいのが、ベンチに坐っている監督やコーチではないだろうか。他にすることが無いせいか、さかんに何かを口に放り込んでは噛んでいる。その合間には多量のツバを吐く。

 以前は、噛みタバコを噛む人が多かったようだが、最近は、ヒマワリの種を噛む人も増えてきたと聞く。最もスタンダードなタイプとしては、チューインガムを噛む人が挙げられるだろう。

 それがツバを吐く行為につながってくるらしいのだが、中には、ヤンキースのジータ選手のように、風船ガムをふくらませる行為だけで終わる場合もある。

 日本人の大リーガーたちはどうだろうか。野茂やイチローがツバを吐いてる姿など見たこともないが、最近二、三の選手がペッペッとやっているのをついに見てしまった。彼らだって、日本にいた頃は、そんな態度は取らなかったはずだ。

 日本人には、郷に入れば郷に従えというところがあるので、そういう選手たちの行為も、ちょっと行き過ぎた「お付き合い」だと言えるのかも知れない。

 とにかく、吾輩はここで宣言したいと思う。日本人選手は、サムライは、ツバを吐かない、と。

 このことについて、あなたはどう考えるだろうか。外国人選手のツバを吐く態度を見て、あなたは何を感じるか、知りたいものだ。あなたは肯定派か、それとも否定派か?。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

心と体